
金の価格変動要因
歴史から見たゴールドの価格変動

●1990年代後半、欧州主要各国の保有金売却で下落傾向
欧州で新通貨制度の創設が進められる90年代、英国はこの制度に参加せず独自路線を歩みました。ブラウン蔵相が保有金を積極的に売却したことで、金価格は97年以降、下落基調に。さらに99年各国が5年間で2000トンの保有金を売却すると発表(ワシントン協定)、8月には底値に至りました。
●2000年以降の上昇傾向は、リーマンショックで崩壊
00年以降、新興国(中国・ロシア・ブラジル・インドなど)が著しい成長を遂げたことで、世界経済は回復基調となり、コモディティ価格は上昇。05年以降、金価格の上昇は顕著となり08年3月に1030ドルの高値を付けました。しかしその後、リーマンショックによって投資資産を現金化する動きに巻き込まれました。売りが売りを呼び、10月には680ドルまで急落し、その後は安全資産としての買いが入り上昇基調へ。そのまま10年代前半の欧州債務危機を背景に買われ、当時の史上最高値となる1920ドルまで上昇しました。
09年までは政府・中央銀行による保有金売却の動きが続いていましたが、10年には購入が上回り、金売却の動きに歯止めがかかりました。今日まで、中央銀行の買いは下値を支える要因となっています。
●2012年以降のトレンド
12年以降は景気回復とともに金利が上昇、金価格は下落傾向が続きましたが、16年以降は再び上昇基調を強めました。20年のコロナショックでは、安全資産として再注目。景気を支えるための金融緩和もあって、8月には史上最高値の2072ドルまで水準を切り上げ。その後下落したものの、22年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、金価格は史上最高高値に迫る2069ドルまで上昇しました。
価格変動要因
【イメージ図】

【詳細説明】
要因① 為替動向

米ドルやユーロなどの主要な国際通貨が下落し通貨不安が高まると、金市場への投資が活発化し、金価格が上昇する傾向があります。なお世界的には金価格は主にドル建てで決まるため、一般的には「ドル高=金価格下落」「ドル安=金価格上昇」という関係性が見られます。一方、日本円建ての金価格は円安が進行すると上昇するため、ドル建ての金価格が横ばいでも、円建ての金価格は上昇する傾向にあります。
要因② 金利水準

預金や債券の保有とは異なり、金は保有していても利息がつきません。そのため、金利が上昇すると銀行預金や債券の利回りが魅力的になり、投資家は金よりもそちらを優先する傾向があります。結果として、金価格は下落しやすくなります。逆に2025年9月に米連邦準備理事会(FRB)が利下げを行った際には、世界的な金価格の上昇が見られるといったこともありました。
要因③ インフレ

インフレとは物価が上昇する現象ですが、別の見方をすると通貨の価値が下がることを意味します。通貨価値の目減りを避けるため、資産を金で保有しようとする動きが強まり、金価格が上昇する傾向があります。また、インフレ局面では実質金利が低下しやすく、この点も金価格の上昇を後押しします。
要因④ 需給バランス

金はモノの側面を持っており、その価格は需要と供給のバランスによって決まります。そのため、需要が増加したり供給が減少したりすると、金価格は上昇するのです。具体的には、宝飾品やテクノロジー分野での需要増加、そして投資需要の拡大等が価格を押し上げます。また、金の埋蔵量には限りがあるため、産出量が減少し供給が減れば、価格はさらに上昇する傾向があります。
要因⑤ 中央銀行の金売買

各国の中央銀行は、外貨準備における米ドル依存を軽減するため、金の保有比率を高める動きを加速させています。信用リスクがなく、価値が普遍的とされる金は、安全資産として特に注目されており、なかでも自国通貨の安定性に懸念がある新興国の中央銀行による購入が顕著です。こうした各国中央銀行による金の買い増しは、金価格の上昇要因となっています。
要因⑥ 地政学リスク

「有事の金」という言葉が示す通り、世界各地での紛争や政治的緊張の高まりは、金価格を押し上げる要因となります。ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の緊迫、米中対立などの出来事は、投資家のリスク回避行動を促し、金への投資を加速させています。